Vol.7 動力伝達装置の点検
車検や12ヶ月法定点検を受けた際の分解整備記録簿の点検項目には、
動力伝達装置と表記(写真①)された箇所があります。
【写真①】
クラッチレバーの遊びという項目がありますが、遊びにはバイクに乗る方の好みで個人差があります。
しかし、車検や点検の作業をする際に限度を越した遊びに遭遇する時が稀にあります。
前述に好みと書きましたが遊びが極端に少ない時に起因する、不具合になる現象をご紹介いたします。
左手のクラッチレバーに適正な遊びがある場合、クラッチケーブルを介してエンジンの中にあるクラッチプレートを押しつけているプレッシャープレートが引っ張られて、中に入っているプレートに隙間が出来ます。それが、クラッチが切れている状態です。これでギヤチェンジが出来る様になります。
クラッチがちゃんと切れている時には確実にカッチとギヤははいるのですが、遊びが極端に少ない場合、エンジンの中のクラッチプレートは少しずつこすれ合っています。
半クラッチ状態です。この状態を続けるとクラッチの摩耗が進み、最悪の場合クラッチを繋いでも(戻しても)前に進まなくなる時が有ります。(写真②)
【写真②】
※この写真はその最悪の状態のプレートです。
この不具合はエンジンオイルを交換した際に鉄粉が出たり、オイルが異常に黒い場合に発見する時ことが有ります。
次に、遊びが極端に多い場合ですが、クラッチレバーを握っていてもエンジンの中のクラッチプレートはくっついていて、エンジンの動力はギヤに伝えられています。
この状態が『ギヤを入れる時に固い』という症状になります。
当然、固いという事はギヤを無理して動かしているので、早い段階で適正な遊びに調整しないと無理がたたり、ギヤが入りづらいバイクになってしまいます。
クラッチレバーの遊びはハンドルを左右に切った時に若干ですが遊びが変わります。
それは、ハンドルを切る事でクラッチケーブルが引っ張られる為です。
その若干の伸縮を考え、プロのメカニックは調整を施します。
定期点検を行った際、メカニックがお客様に「クラッチレバーの遊びが変わっているのでご注意ください」とお伝えしたときは、この様な事が起こらない様に適正な遊びに調整をしたとお考えください。
写真③が新品のプレートを装着している状態です。
【写真③】
適正な遊びで走行した場合、数万キロクラッチの交換をしないで済みますが、遊びが不適切な場合、数千キロで走行できなくなりますし、数万円の修理費が必要な場合もあります。
遊びの調整の点検のお話でした。